工場を建てる際の建設会社の選び方
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一級建築士 / 一級建築施工管理技士
- 宮前 聡志
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工場の新築・増改築を計画する場合、どこに頼むべきでしょう。ゼネコンか、地元建設会社か。設計施工分離か、一貫か。それぞれについて、さらに留意しておきたい見積や工期について紹介します。
地場ゼネコンか、地元の建設会社か
大手の建設会社はゼネコンと呼ばれ、そのなかにも国家プロジェクトを手がけるような超大手のスーパーゼネコンから、地方の工事に特化した地場ゼネコンまで、さまざまあります。では、地元に根差した建設会社と地場ゼネコンでは、何がちがうのでしょうか。
まず、請け負う工事の規模がちがいます。ゼネコンは「特定建設業許可」を受け、元請として下請業者を取りまとめながら大規模な建設工事を行います。一方で建設会社は「一般建設業許可」を受け、比較的、小規模な工事を請け負うことが多いといえます。
地元建設会社は、元請として自社で施工を行い、専門性の高い分野は下請に出すこともあります。また、ゼネコンの下請として施工を担うこともあります。
端的にまとめると、地場ゼネコンは地元の公共工事に強く、地元建設会社は民間工事に強いと言えます。
地元の会社だから、いいこと
地元特有の土地や気候、生活習慣にくわしく、風土に沿った設計施工を行います。それは建物の維持のしやすさ、ランニングコストの削減や、時に被災を免れることにつながります。
何より竣工後のメンテナンスが行き届き、いざという時に頼れる身近な存在です。機動力のあるアフター対応は、地元の建設会社の一番の強みといえるでしょう。せっかく建てた工場を長持ちさせるためにも、アフターメンテナンスの充実した建設会社を選ぶことが大切です。
ゼネコンと地元の建設会社について、くわしくは「設計施工一貫方式ならゼネコン?地元の建設会社?それぞれのメリットを比較してみた」の記事もご覧ください。
設計施工分離方式か、一貫か
一般的に建築の発注方式は大きく分けて「設計施工分離方式」と「設計施工一貫方式」があります。
「設計施工分離方式」は文字どおり、設計と施工を分けて発注する方式です。メリットを挙げると、設計者は施工側におもねることなく自由なデザイン性を発揮しやすく、設計事務所が工事監理を客観的に行うことで手抜き工事のリスクが軽減するとされています。
しかし、設計者・施工者それぞれの選定や契約に手間と時間を要します。また、施工のノウハウを設計に反映しづらいので、より良い工法や技術が生かされないことがあります。さらに工期やコストが予測しづらく、割高になる場合があることがデメリットといえます。
一方で「設計施工一貫方式」は設計部門のある建設会社に設計・施工を一括で依頼する方式で、デザインビルド方式とも呼ばれます。メリットは、窓口が一本化されて最初の相談から施工の最後までワンストップで完結すること。発注にかかる時間と手間が軽減されます。
しかし、施工しやすさやコストを優先して設計が妥協し、デザイン性を発揮しづらいといわれたり、工事監理のチェックが甘くなるといったデメリットも考えられます。
設計施工分離方式と一貫について、くわしくは「設計施工一貫方式とは。メリット、デメリット、分離方式との違いも解説」の記事もご覧ください。
設計施工一貫方式だから、いいこと
設計施工一貫方式では、設計は施工の技術や工法を生かし、施工は設計時から準備に取りかかれるので、より良い品質を追求することができます。また、早い段階から概算見積やコスト管理ができるので、コスト削減や工期短縮が見込めます。
また、担当窓口である営業から設計や施工部門までつながり、密に連携を取るので、施主にとってはコミュニケーションが図りやすく、要望を実現しやすくなります。
設計・施工部門が内在する地元総合建設会社をおすすめする「工場の新築・増改築に適した地元総合建設会社を選ぶポイントと5つのメリット」の記事もご覧ください。
安さと早さはあてにならない
設計施工一貫方式では、建設会社によって見積もりの項目からして異なり、価格だけの単純な比較はできません。見積は安ければいいわけではありません。
概算見積は「どの項目を計上するか」「その項目にどれだけの作業を含むか」「数量や単位をどうするか」など、計算する人の考えや経験に基づいて作成されるため、相見積の金額に大きな差があらわれる場合があります。
金額に納得のいかない場合でも、建設会社との打ち合わせを重ねることで見積の精度は高まり、現実的な金額に近づくはずです。
また、建設工事は国土交通省の求める「適正な工期」に沿って行う必要があり、不当な早さを求めることは禁じられています。そもそも適正な工期が設定されないと、建設現場に負荷をかけ、施工品質の低下につながりかねません。
工場建設における見積もりの注意点については、「「安い早い」に惑わされない。 工場建設における見積もりの注意点」の記事をご覧ください。
適正な工期の設定方法については、「適正な工期の設定方法について解説。より良い工場建設のためにできることとは」の記事をご覧ください。
まとめ
設計・施工部門のある地元の建設会社に工場の新築や増改築を依頼する際は、綿密な計画を立て、スケジュールに余裕をもって、建設会社と細かな打ち合わせを重ねていきましょう。
また、価格や技術を確認するだけでなく、工場建設の目的やビジョンを明確にし、なぜ建てるのか、どう使いたいか、今後どうしていきたいかなど、会社の展望や思いを建設会社と共有することが大切です。
そうしたことに応えてくれる建設会社なら、メンテナンスを含め工場稼働後も一緒にビジネスに取り組んでいく、信頼できるパートナーとなってくれるはずです。
- 執筆者
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一級建築士 / 一級建築施工管理技士
- 宮前 聡志
営業企画課課長。工場管理経験と設計業務を経験し、2018年にSAWAMURAに建設プロデューサーとして入社。現場・設計・営業を知るオールラウンダー。
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