食品工場建設プロジェクトの重要なプロセス「現地確認」の役割
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JHTC HACCP上級コーディネーター / MBA
- 鈴木 戒
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HACCPに基づいた食品工場を建設し、事業に適した運用を行うためには、まず設計段階に入る前に「現地確認」を行うことが重要です。既存工場や計画地の現状と課題を把握することで、新たな工場計画に反映させることができます。
事前の現地確認を怠ると、プロジェクトの進行や建設後の運用において多くの問題が発生し、ランニングコストの増大や生産効率の低下、さらには食品安全に関わるリスクが生じる可能性があります。
本記事では食品工場建設プロジェクトにおいて、事前に既存工場や計画地を確認することの重要性について、確認すべきポイントとともにご紹介します。
食品工場の建設プロジェクトに現地確認が欠かせない理由
食品工場の建設プロジェクトでは、HACCPに基づいた生産・管理を行うため、食品の安全性と衛生管理の基準を満たす工場であることが求められます。
しかし、プロジェクトを進める中で、施主と建設会社の間での言葉や図面上のやり取りだけでは、衛生基準に関する認識のズレが生じたり、重要な課題が見落とされることがあります。
例えば、生産機械への認識が甘く、湿度と換気量の設定ミスから工場内にカビが発生したり、標準衛生作業手順の認識違いによって、エアーシャワー有無や手洗い器の数などのスペースが取れなかったなど、施主側で問題に気づかずに進めてしまっているケースも多いです。
設計の段階より前に既存工場や計画地の状況を確認することで、工場の衛生管理における具体的な課題を見つけ出し、建設後をイメージした長期的な目線を持って、工場建設プロジェクトを計画することができます。
既存工場や計画地で確認すべきポイント
HACCPに基づいた工場を実現するために、既存工場や計画地で確認すべきポイントをご紹介します。
各部屋の衛生区域の確認
各部屋の役割や、それに伴う人・モノの動線を確認し、どのエリアを最も衛生的に保つべきかを評価します。また、掃除の方法や洗剤の管理、掃除用具の保管場所など、衛生管理に関する細かな点もチェックし、運用を見据えた計画を立てます。
衛生区域については「汚染区、準清潔区、清潔区とは?HACCPにおける重要性についても解説」の記事も参考ください。
工場の周辺環境の確認
工場の周辺環境を確認することも非常に重要です。工事の際には、トラックの動線が確保できるかどうかや、工事中の騒音が周辺に与える影響を確認する必要があります。
また、食品工場では臭気の発生や厳格な温度管理が求められるため、風向きや日照条件といった環境要因も確認する必要があります。臭気が近隣に与える影響を考慮し、排気口の位置や廃棄物の置き場所を慎重に検討します。さらに、室外機の設置場所によっては日光の影響で空調の性能が低下する可能性があるため、ランニングコストを抑えつつ効率的な運用ができるよう計画を立てることが求められます。
上下水のインフラ環境の確認
下水処理においては、処理負荷がかからないように配慮する必要があります。具体的には、排水量や汚染具合を把握し、下水につなぐ際に負荷がかからないよう計画し、浄化槽のスペックや設置位置なども慎重に決定する必要があります。事前に確認することで、将来的なトラブルの防止に繋がります。
従業員の作業環境の確認
衛生面に加え、従業員が働きやすい環境として適切であるかを考慮することも重要です。
例えば、作業中に寒さを感じる場合には空調を工夫したり、休憩スペースや更衣室には、作業着に埃がつきにくい内装を採用するなどの対策が考えられます。
実際に働く従業員にヒアリングを行うことで、衛生的かつ快適な作業環境の実現に役立てることができます。
これらのポイントを事前に確認することで、見落とされがちな問題を早期に発見し、プロジェクトの成功に向けて着実に進めることができます。
まとめ
食品工場の建設において、現地確認はプロジェクト全体の成功を左右する重要なプロセスです。現場を直接見て確認し、実際に働いている従業員の意見を計画に反映させることで、事業目的に適した食品工場を建設することができます。
また、現地確認を通じて、周辺環境やインフラの整備状況、地域の気候条件など、工場の運用に影響を及ぼす要因も検討することができます。
食品工場の建設プロジェクトにおいて建設会社を選ぶ際には、本記事でご紹介した現地確認のプロセスを確実に実行して、具体的な提案に落とし込める会社を選ぶことが成功の鍵となります。
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現地確認を通じて、既存工場やその周辺環境を細かくチェックするだけでなく、プロジェクトの進行、予算管理、竣工後のアフターフォローまで、事業に適した安全な工場建設を総合的にサポートすることができます。
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JHTC HACCP上級コーディネーター / MBA
- 鈴木 戒
2020年からSAWAMURAの食品工場プロジェクトに参画。2022年から正式入社し同職に。食品工場建築と資産活用で多くの実績を持つプロフェッショナル。
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