正確な要件定義がカギ。食品工場建設におけるプロジェクト計画のポイント
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JHTC HACCP上級コーディネーター / MBA
- 鈴木 戒
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食品工場の建設には、衛生、安全性、品質を確保するための繊密な計画が必要です。特に、HACCPに基づく運用が求められるため、これを前提とした設計・建設が不可欠です。
プロジェクトを確実に進めるには、工場の機能や導入機器、排水システムなどに関する要件を計画段階で正確に定義し、運用開始後に発生しうる問題を未然に防ぐことが重要です。
本記事では、食品工場の建設計画段階で考慮すべきポイントと、SAWAMURAが提供するサポートについてご紹介します。
計画不足が引き起こす食品工場の問題
食品工場建設では、計画が不十分な場合、運用時にトラブルが表面化することがあります。その典型例として、水に関する問題が挙げられます。
食品工場は生産工程で大量の水を使用するのが特徴であり、その使用量を適切に見積もることが重要です。
実際に、ある工場では計画段階で「工場全体で1日40トンの水使用量があれば十分」と過去の実績を基に浄化槽の規模を決定しました。しかし運用が始まると、新しい生産ラインの稼働や運用条件の変化により水の使用量が想定以上に増加し、1日70トンもの水が必要となる事態が発生しました。その結果、以下のような深刻な問題が起きました。
設備の破損による営業停止
使用水量が設備の能力を超えることで、浄化槽がキャパを超えオーバーフローし、その結果工場の稼働を停止せざるを得なくなってしまいました。また、衛生基準を満たせず行政からの指導を受ける事態となりました。
追加工事とコストの増加
設備の能力不足を補うために追加で改修工事が必要になったことで、予期せぬ追加費用が発生してしまいビジネスにも悪影響を及ぼしました。
関係者間のトラブル
設計の不備による追加工事や工期遅延が、発注者と施工業者間での責任問題に発展してしまいました。
このような計画不足による問題を回避するには、十分な事前調査と綿密な計画が求められます。そのためには施主と建設会社が緊密に連携し、情報を共有し合いながら要件を正確に定義し、抜け漏れを防ぐ体制を構築することが重要です。
食品工場の要件を明確するためのポイント
計画段階で要件を正確に整理するために、以下のポイントを考慮してプロジェクトを進めると効果的です。
チェックシートの活用で情報整理
チェックシートを活用することで、施主と建設会社間の情報共有がスムーズになり、要件や注意点を見落とすリスクを軽減できます。以下のような項目について詳細な事項を含めて確認することで、計画の精度を高められます。
- 取り扱う製品の特性
- 取り扱う機械の要件
- 必要なインフラ設備(水、電力、空調)
- 衛生管理方法(清掃設備、防虫対策)
- 製品の保管方法や温度管理
- 生産ラインの動線
- 従業員の動線
専門知識を持つプロフェッショナルの参画
食品工場建設では、工場の衛生管理やHACCPに関する知識が求められるため、プロジェクトの初期段階から関連分野の専門家の意見を取り入れることが重要です。HACCPに対応した経験豊富な建設会社を選ぶことも有効な手段の一つです。
また、初めて導入する機械がある場合は、機械メーカーとの協力も必要です。機械メーカーと共に導入機器の仕様や設置条件を詳細に検討し、最適な配置や運用方法を事前に確認することで、設置後のトラブルを未然に防ぎます。
このように、計画段階でしっかりと情報を整理し、専門的な知識を活用することがプロジェクトの成功に大きく寄与します。SAWAMURAではこれらのポイントを踏まえ、食品工場の特性を考慮したプロジェクト体制を構築し、スムーズかつ正確なプロジェクト推進を実現しています。
SAWAMURAのプロジェクト体制
SAWAMURAは、⾷品⼯場建設プロジェクトサポートサービス「Food Archi(フードアーキ)」で、食品工場建設プロジェクトの成功に向け、以下の体制とサポートを提供しています。
HACCPに精通した専門スタッフが在籍
SAWAMURAには、日本HACCPトレーニングセンター認定の上級コーディネーターが在籍しています。食品業界特有の厳しい衛生要件を熟知したスタッフが、HACCPに基づいた提案で安心の食品工場運用を実現します。
チェックシートによる進行管理
これまでに取り組んだ多数の食品工場プロジェクトを通じて得た知見を基に、計画段階で確認すべき項目を網羅したチェックリストを作成・活用しています。施主との綿密な話し合いを重ねながら見落としがちなポイントを的確に整理し、プロジェクトの円滑な進行をサポートします。
設計から施工まで一貫したサポート
SAWAMURAでは、設計から施工までを一貫して担当しています。この体制により、複数業者間での連絡ミスやトラブルを防ぐだけでなく、施主の要望や食品工場に求められる要件を的確に反映し、確実なプロジェクト進行を実現します。
まとめ
食品工場建設プロジェクトを正しく進めるためには、食品工場に求められる様々な要件を考慮した上で計画を行う必要があります。そのためには施主と建設会社の密接な情報共有が不可欠です。要件を明確化し抜け漏れを防ぐとともに、専門家の知見を取り入れながらプロジェクトを進める建設会社に依頼することが安心の工場運用に繋がります。
- 執筆者
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JHTC HACCP上級コーディネーター / MBA
- 鈴木 戒
2020年からSAWAMURAの食品工場プロジェクトに参画。2022年から正式入社し同職に。食品工場建築と資産活用で多くの実績を持つプロフェッショナル。
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