事業内容にふさわしい工場を建てるために。食品工場建設における予算管理のためのチェックポイント
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JHTC HACCP上級コーディネーター / MBA
- 鈴木 戒
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工場建設には多額の費用がかかるため、予算管理は極めて重要です。特に食品工場では、設備関連の費用が膨らみやすく、当初の予算と実際の費用に差が生じることがよくあります。この差異を防ぐためには、計画進行ごとでの見積もりが不可欠です。
本記事では、プロジェクトをスムーズに進め、予算に適した工場を建設するために、重要なポイントについて解説します。
食品工場建設は、当初の予算計画より建設費⽤が膨らむ場合が多い
食品工場は、食の安全性や品質を確保するために、「空調」「冷蔵・冷凍設備」「排水設備」など、多岐にわたる設備が必要であり、他の製造に比べてさらに細かい管理が求められます。これらの設備は、工場の事業内容や規模、運用方法によって求められるスペックも異なるため、場合によっては費用が大きく変動する可能性があります。
そのため、食品工場の建設費用を単純な坪単価で見積もると、プロジェクトが進むにつれて、実際の費用と予算に大きな差が生じることがあります。施主側が想定していたよりも費用が5割り増しになったというケースもあります。その結果、予算の適切な配分ができず、プロジェクトの進行が遅れたり、追加の改修工事が必要になるリスクが高まります。
こうした差異を防ぎ適切な予算管理を行うためには、プロジェクトの計画段階で事前に必要な要件を詳細に把握し、見積もりに反映させることが不可欠です。
事業に適した予算管理には、施主と建設会社の間での情報共有が重要
予算を適切に管理するためには、施主と建設会社が計画段階から密に情報共有し、機械仕様や設備要件など、あらゆる要件を正確に把握することが重要です。
例えば、導入する機械の仕様を理解することで、必要な設備や電力容量を正確に決定することが可能になります。このように、単に「工場の広さ」といった基本情報だけでなく、「各空間での具体的な作業内容」など、用途や要件を明確にすることで、見積もりの精度をさらに向上させることができます。
適切な予算管理のために工場の計画段階で確認すべきポイント
予算に対して費用対効果の高い工場建設を実現するためには、工場の運用まで見据えてさまざまな要件を検討する必要があります。以下のポイントを確認することで、見落とされがちなコストやリスクを事前に把握し、適切な予算管理を行えます。
運用時に発生するコストの特定
工場の運用において発生するコストを正確に見積もることが重要です。例えば、排水設備を設置する際には、製造工程や清掃でどれくらいの排水が出るかを計算し、それに見合った浄化槽の設計を行います。
また、冷蔵庫の使用に関しても、扉の開閉頻度や保存する食品の種類によって、エネルギー消費が変わるため、これらを考慮して適切な冷蔵設備を選ぶことが重要です。
建物スペックと事業予算の差異を明確化
事業内容に対して過剰な建物スペックが設定されていないかを見直すことは極めて重要です。例えば、過剰なスペックの設備を導入すると、初期投資だけでなく運用コストも大幅に増加する可能性があります。
建物面積の調整とコストの最適化
建物面積が実際に必要な広さかどうかを慎重に検討することが重要です。例えば、施主が将来的な事業拡大を見越して広めの設計を希望することがありますが、初期段階で過剰な面積を設定すると予算や運用コストが増大するリスクがあります。その場合は、初期段階で適切な建物面積を設定し、将来の拡張に備えて柔軟な設計を行うことが重要です。
コストダウンおよびバリューエンジニアリングの検討
製造工程や設備など、運用における要素を見直し、無駄なコストを削減します(コストダウン)。さらに、コストを削減するだけでなく食品工場としての生産性や品質を最大限に引き出すために(バリューエンジニアリング)、製造工程や設備、動線設計を最適化し、効率的な予算投資を実現します。
工場稼働後の作業手順と衛生管理の見直し
工場稼働後の作業動線についても考慮が必要です。作業手順や衛生管理方法まで確認しながら効率的に行えるかを検討します。
これらのポイントを事前に確認し、対策を講じることで、予算に対する正確な見積もりが可能となり、予期せぬ追加費用の発生を抑えることができます。
まとめ
食品工場の建設には、施主と建設会社との十分な情報共有が不可欠です。計画段階で事業内容や運用方法を詳細に検討することで、見積もりの精度が向上し、予算内で事業に適した工場を建てることができます。
食品工場建設プロジェクトを進める際には、食品工場に関する専門知識を持ったコミュニケーション能力に優れたパートナーを選ぶことで、円滑なプロジェクトの進行が実現できます。
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- 執筆者
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JHTC HACCP上級コーディネーター / MBA
- 鈴木 戒
2020年からSAWAMURAの食品工場プロジェクトに参画。2022年から正式入社し同職に。食品工場建築と資産活用で多くの実績を持つプロフェッショナル。
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