建設業におけるDXのすすめ
-
一級建築士 / 一級建築施工管理技士
- 宮前 聡志
- コピーしました
- この記事を印刷する
- メールで記事をシェア
日本が目指すべき未来社会として提唱されたSociety5.0では、IoT、ロボット、AI、ビッグデータなどの最新技術を産業や社会生活に取り入れ、経済発展と社会的課題の解決の両立を目指しています。
あらゆる分野でDX(Digital Transformation、デジタル・トランスフォーメーション)、つまりデジタル技術で人々の生活をより良くすることを目指す取り組みが進んでいますが、ここでは建設業でのDXについて紹介します。
建設業でのDX推進の経緯
国土交通省が2016(平成28)年から進める「i-Construction(アイ・コンストラクション)」は、建設現場にICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)を導入することで、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取り組みです。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/20200507/pdf/shiryou2.pdf
このi-Constructionを中核にして、特にインフラ分野においてデータとデジタル技術を活用して業務、組織、プロセス、建設業の文化や風土、働き方の変革を目指しています。
https://www.mlit.go.jp/common/001385990.pdf
その背景には建設現場における将来の人手不足、頻発する災害、インフラのさらなる老朽化があり、技術革新とコロナ禍での非接触・リモート化の進展が後押しして、インフラ分野のDXが推進されることとなりました。
建設業のDXが進まない理由
建設業は、施主の注文で指定の土地に一品ずつ生産する「一品受注生産」、土地ごとの地理・地形や日々の気象条件に左右される「現地屋外生産」、資・機材や施工ごとに多種多様かつ多数の作業員を必要とする「労働集約型生産」といった特性があります。
こうした特性から、製造業で進められてきた大量生産向きのライン生産方式、多品種少量生産向きのワークセル生産方式(一人または少人数が幅広い作業を担う)、そして自動化やロボット化に取り組めないのが現状でした。
建設業のDX推進で目指す社会
2023年度までに小規模なものを除くすべての公共工事でBIM/CIM活用への転換が図られています。BIM/CIMは「Building/Construction Information Modeling/Management」の略語で、測量・調査、設計段階から3次元モデルを構築し、部材などの情報を結びつけ、その後の施工、維持管理なども含め全工程の関係者が共有、活用することをいいます。
3次元モデルを活用したICT施工が浸透すれば、職人による高度な技術の継承と、安全性や生産性の向上、働き方改革の実現につながります。
下のイラストは、これから20年から30年後(おおむね2040年から2050年)の将来を想定した社会イメージのうち、「建設現場」を描いたものです(令和4年「第5期国土交通省技術基本計画の概要」より)。
ICT技術で建設現場を管理しながら、ロボットや建設機械を遠隔操作し、道路や橋の建設だけでなく、地質調査や点検補修も無人で行っています。脱炭素・地産地消・完全リサイクルを実現し、人手不足でも生産性と安全性が最大限に発揮される建設現場が描かれています。
地方中小企業のDX取り組み事例
国土交通省が行う建設業許可業者数調査によれば、建設業者の99%は資本金5000万円未満の中小企業や個人事業者が占め、その半分ほどは地方に分散しています。
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001478910.pdf
DX推進の裾野を広げるため、経済産業省では中小企業に向けてDXの手引きや活用事例をまとめています。建設業に限らず、さまざまな製造業の身近な事例が紹介されています。ぜひ参考にしてみてください。
DXセレクション2023
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-selection/dxselection2023report.pdf
DXセレクション2022
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-selection/dx-selection2022-2.pdf
- 執筆者
-
-
一級建築士 / 一級建築施工管理技士
- 宮前 聡志
営業企画課課長。工場管理経験と設計業務を経験し、2018年にSAWAMURAに建設プロデューサーとして入社。現場・設計・営業を知るオールラウンダー。
-
- コピーしました
- この記事を印刷する
- メールで記事をシェア