その土地に工場は建てられますか?工場が建設可能な「用途地域」とは
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一級建築士
- 南 勇次
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工場を建てることができるのは、どんな土地でしょうか。都市計画法では「用途地域」を定めて、土地利用のルールを設けています。さらに、建築基準法で用途地域ごとの建物のルールを定めています。ここでは用途地域について紹介します。
都市計画法が定める土地利用のルール
日本では「都市計画法」でまちづくりに関わるさまざまなルールが定められています。これによって住居、店舗、事務所、工場など土地利用の仕方を決め、秩序立てた整備を図ることで、効率的な都市活動を推進したり、環境を保護したり、特色あるまちなみを守ることができます。
都市の範囲を決め、整備計画を立てるために、市街地から郊外の農地や田園地域まで含めて人の動きや土地利用の仕方を明らかにし、将来のまちの姿を見通した「都市計画区域」が地方自治体によって決められています。
都市計画区域において、すでに市街化されていたり、これから計画的に市街化をすすめるエリアを「市街化区域」に定めています。開発をおさえて市街化を抑制すべき「市街化調整区域」も定めています。どちらにも区分されないのが「非線引き区域」です。
都市計画区域の外にあっても、これから開発される可能性があったり、乱開発をおさえたいエリアを「準都市計画区域」としています。
区域区分ごとに決まる「用途地域」
都市における住居、商業、工業といった土地利用は、似たようなものが集まっていると、それぞれにあった環境が守られ、効率的な活動を行うことができます。しかし、種類の異なる土地利用が混じっていると、互いの生活環境や業務の利便性が悪くなります。
そこで、都市計画法では、住宅地、商業地、工業地などに区分した13の「用途地域」を定めています。それぞれの目的に応じて、建てられる建物の種類を制限しています。
ただし、用途地域はすべての土地に定められるわけではありません。前述の区域区分のうち、用途地域が指定されるのは「市街化区域」「非線引き区域」「準都市計画区域」です。市街化を抑えたい市街化調整区域には原則として用途地域は定めず、都市計画区域外は準都市計画区域を例外として、そもそも都市計画法が適用されません。
工場が建てられる用途地域は?
13ある用途地域のうち、工場が建てられるのは、おもに商業地と工業地に分類される地域です。用途地域は市町村で決定し、工場を建てようとする土地がどれにあたるのか、地方自治体のホームページなどで簡単に確認することができます。
参考:用途地域ごとの土地利用(国土交通省 都市局 都市計画課より)
https://www.mlit.go.jp/crd/city/plan/03_mati/04/index.htm
建築基準法が定める建物のルール
次に、それぞれの用途地域では具体的にどんな建物を建てることができるのか見ていきます。「建築基準法」では、一つひとつの建物に対してのルールを定めています。下は、その中から「工場・倉庫など」にまつわるルールを抜粋してまとめた表です。
参考:用途地域内の建築物の用途制限(国土交通省 建築基準法制度概要集より)
https://www.mlit.go.jp/common/001215161.pdf
基本的に上表に示すような制限がかかりますが、「特別用途地区」を指定して条例を定めた場合や、「特定行政庁」が個別に「当該用途地域における環境を害する恐れがない」などと認めて「建築審査会」の同意を得て許可した場合には上表以外の条件でも建築が可能となります。
特別用途地区は「地域地区」のうちのひとつで、用途地域に重ねて定めることができ、規定の制限を強化または緩和することができます。
そもそも用途地域も地域地区のうちのひとつです。都市計画法でおもな土地の使い方を用途地域で分類し、そのほかは補助的な地域地区として細かなルールを設けています。
たとえば、建物が密集していて火災を予防すべきエリアは「防火地域」に定められ、木造建築物を建てることができません。また、歴史的建造物が立ち並ぶエリアが「景観地区」に指定されると、建物の高さや外壁の色に制限が設けられたりします。
建築審査会とは、建築基準法の例外となる案件を審査する第三者機関です。特定行政庁である都道府県や、建築主事のいる市町村に設置されます。
特定行政庁とは、建築主事のいる市や都道府県など地方自治体の長が特定行政庁となります。建築基準法の重要な許認可を行う役割をになっています。
建築主事とは、建物の審査、確認、検査などを行う公務員です。建築主事は人口25万人以上の市と、都道府県に置かなければいけない決まりがあります。
まとめ
工場建設のできる土地は、都市計画法の定める用途地域のうち「近隣商業地域」「商業地域」「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」です。具体的にどんな建物を建てられるかは建築基準法の定める条件があります。
さらに、その土地が地域地区に指定されている場合、消防法や景観法などで規定が定められている場合があります。それぞれの法令は地方自治体が定めるものであり、法改正も行われます。土地利用には用途地域だけでなく、さまざまなルールを守る必要があるのです。
- 執筆者
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一級建築士
- 南 勇次
組織設計事務所にて官公庁案件を主とした設計監理業務を経験し、2021年にSAWAMURAの設計課へ入社。地域材を活用した中大規模木造の設計を勉強中。
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