「工場を、誇ろう。」働く環境への投資が新しい価値を生む。コプレック小林社長インタビュー
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日本の製造業では、長年にわたり「生産効率」と「コスト削減」が重視されてきました。その中で、働く環境への投資は後回しにされることも少なくありませんでした。
静岡県の板金加工会社、株式会社コプレックの小林社長は、そうした状況に疑問を抱き続けてきた一人です。同社は「工場を、誇ろう。」という理念のもと、働く人が快適に過ごせる環境づくりを進めています。同社の実践は今、一社の取り組みを超え、「FPA(ファクトリー・プライド・アソシエーション)」という新たな活動へと発展しています。
同社の取り組みについてコプレックの小林社長にお話しをお伺いしました。
きっかけは製造業の働く環境に対する違和感
大学卒業後、東京のIT企業に勤めていた小林社長は、「組織運営」に興味を持ち、26歳で家業に戻りました。そこで直面したのは、工場で働く人々が置かれている環境に対する違和感でした。
「工場で働く人たちへの扱いが、あまりに不当なんじゃないかとずっと考えてきたんです。戦後の日本経済を牽引し、世界から信頼されてきた『日本品質』を支えているのは現場の人たちですよね。それにも関わらず、コストダウンの圧力ばかりが強く、快適さとは無縁の『3K』と呼ばれる環境で働くことが当たり前とされている。これって、おかしいんじゃないかと思ったんです。」(小林社長)

株式会社コプレック 小林社長
日本のものづくりを根底で支える、重要な仕事であるはずなのに、現場の環境は後回しにされている。従業員が人生の多くの時間を過ごす場所が、果たしてこんな環境でいいのだろうか。——そんな危機感が自社の環境を変えようと動き出す最初のきっかけでした。
社長就任後、まずは食堂やトイレの改修から環境への投資を進めました。しかし当初は「ただ贅沢をしているだけだ」と周囲から受け止められることもあったといいます。
「工場を、誇ろう。」思いを形にした工場
転機となったのは、ホームページ制作を外部のクリエイターに依頼したことでした。
「工場に対する考え方を話したところ、『ホームページを作る前にもっと手前から(理念から)考えていきましょう』と言われました。そこで、自分の中にあった思いを整理し、言語化していったんです。」
そこで生まれたのが、「工場を、誇ろう。」という理念でした。言語化して掲げたことで、それまで「ただの贅沢」と誤解されがちだった環境への投資は、「誇りを育てるために必要なこと」として社内外からも理解されるようになっていきました。
「製造業というと、どうしても機械や道具に対する投資が一番重要視されます。しかし、従業員に目を向けた働く環境に対する投資も同じくらい重要なんです。そこにしっかりとお金をかけることも、大切な経営戦略だと思っています。」
そしてこの思いを働く環境に全面的に反映させたのが、2023年に改修した工場です。 設計にあたり、小林社長がこだわったのは「明るさ」だといいます。
「製造業って、余計な電気を消すんですよ。それが省エネであり、すごい価値があることだと思っている。あれはまずやめた方がいいと思います。確かにコストは減っているかもしれない。ただそれ以上に、人の心が何か削られているはずなんです。」
薄暗い中で電気をこまめに消して回るような環境は、働く人のモチベーションを削ってしまいます。新工場では、「とにかく空間を明るくすること」を優先し、さらに工場内に独自の色分けルールを導入しています。

※画像はコプレックサイトより引用
- 人 = 青
- 道具 = 赤
- 機械 = 黄色
- 空間全体 = グレー
この空間は見た目の美しさだけでなく、整然とした作業環境を生み出しました。
環境投資がもたらした「人が集まる職場」と「社員の誇り」
製造業の人手不足が深刻化するなか、コプレックはこの環境投資の成果を実感しているといいます。また、製造業でありながら今では従業員の3割を女性が占めるまでになりました。
「女性にとっても働きやすい職場づくりは、採用面でも大きな強みになっています。皆さんが安心して来てくださいますし、男女が混在することで、社内の雰囲気もすごく良くなっているんですよね。」
これらの取り組みは対外的にも評価され、2024年にはグッドデザイン賞を受賞しました。小林社長にとって何より嬉しかったのは、賞そのもの以上に社員たちが喜んでくれたことだといいます。
自分たちが毎日働く工場が世の中に広く認められたという事実は、社員のモチベーションを高め、「誇り」へと繋がります。
コスト削減から価値の創造へ。従業員の自発的な挑戦を生む土壌
これからの製造業の目指すべき姿について、小林社長はこう話します。
「コストを削って出す利益も、価値を上げて出す利益も、数字としては同じです。しかし、これからの企業が目指すべき姿は、後者ではないでしょうか。もちろん、新しい価値や体験を生み出し、ビジネスを回していくのは非常に難しいことです。私たち自身もまだまだ試行錯誤の真っ最中ですが、資源のない日本にはそうしたチャレンジが必要だと思っています。」
新たな価値を生み出す源泉となるのは、他でもない人間の「アイデア」です。
「新しいアイデアや、従業員の自発的なチャレンジを引き出すためには、やはり自分が働く企業に『誇り』を持てる環境が必要だと考えます。」
コプレックの工場は単なる作業場ではなく、新たな価値を生み出す源泉としての役割をしっかりと担っているのです。
FPAの究極の目標は「みんなに忘れてもらうこと」
コプレックの工場には、年間約100社もの企業が見学に訪れるようになりました。実際の現場を見た見学者たちから「この考え方はもっと日本に広めるべきだ」と多くの賛同の声が寄せられたことに後押しされ、小林社長は2025年に「一般社団法人 Factory Pride Association(FPA)」を設立しました。
同協会では、働く環境づくりのノウハウ共有や、志を同じくする企業同士のネットワーク構築などを通じて、「工場を誇る」という考え方を広めていきます。
FPAが今後目指す姿について、小林社長はこう語ります。
「FPAの存在を忘れて欲しいですね。そのくらい当たり前の状態になってほしいと思っています」(小林社長)
「工場を誇れる」ことが特別なことではなく、製造業にとって当たり前になること。それが、小林社長とFPAが目指す究極のゴールです。

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- 工場建設ソリューション編集部
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