工場運営と環境問題。工場内で行うべき環境対策について解説
-
一級建築士 / 一級建築施工管理技士
- 宮前 聡志
- コピーしました
- この記事を印刷する
- メールで記事をシェア
製造業にとって、工場運営は企業の発展に欠かせないものですが、同時に環境への影響も大きく、地球環境への負荷が懸念される課題でもあります。そこで、環境へ配慮しながら工場運営を進めることが求められています。
本記事では、工場運営と環境対策に焦点を当て、工場運営で気をつけるべき環境問題と、環境に配慮した工場運営を行うためのポイントについて解説します。
日本の環境問題と制度について
環境問題には様々な要因がありますが、工場などが生産活動を行う際に大気汚染物質が排出される場合や、物流や人流など、自動車の使用によっても大気汚染が引き起こされます。
日本では、1960年代から1980年代にかけて、工場から大量の二酸化硫黄などが排出され、特に工業地帯など工場が集中する地域を中心に著しい大気汚染が発生しました。また、高度経済成長に伴い、工業化や都市化が進んだことで、大気汚染だけでなく水質汚濁や自然破壊も深刻化していきました。
1970年代には環境問題が国境を超える問題として認識され、国際的な取り組みも重要な要素となりました。
国連人間環境会議(ストックホルム会議)が開催された1972年を契機に、世界的な環境保護への意識が高まり、持続可能な開発と地球環境保護に対する国際的な合意が形成され、様々な国際的な枠組みや協定が設けられました。
現在、環境問題はますます深刻化しており、日本でも環境保護に対して厳しい基準や法律が定められています。企業にとって環境対策は単なる義務ではなく、社会的責任として認識されるべき重要な要素です。
工場運営で起こりうる主な環境問題
大気汚染
工場の排気ガスに含まれる有害物質や粒子状物質が大気汚染を引き起こす可能性があります。特に、工場が使用する燃料や原料によって放出される二酸化硫黄や窒素酸化物、揮発性有機化合物などが大気汚染の主な原因となります。
水質汚染
工場で製造や戦場を行う過程で排出される水には、さまざまな汚染物質が含まれています。
これらが適切に処理されないと、汚染物質が水域に放出されると、自然環境や地域住民の生活に悪影響をおよぼしてしまいます。過去には、工場から汚染物質を含んだ水が流出したことが原因の水俣病やイタイイタイ病といった病気が問題になった事例もあります。
土壌汚染
工場の生産活動によって発生する廃棄物が、適切に処理されていない場合、廃棄物が適切な場所に埋められておらず、土壌に直接浸透してしまう可能性があります。
有害物質が土壌に浸透してしまうと、農作物や地下水に影響を及ぼす可能性があります。
騒音
工場の運転による騒音は周辺地域の住民の生活に影響を与える可能性があります。
長時間にわたる騒音は、睡眠障害やストレスを引き起こし、健康に悪影響を及ぼします。また、近隣住民とのトラブルに繋がる大きな原因にもなります。
これらの環境被害を防止するために、工場は環境へ配慮しながら、持続可能な経営と環境対策に取り組む必要があります。
工場内の環境対策の具体的な取り組み
クリーン技術の導入
クリーンエネルギーは、再生可能エネルギーと呼ばれる持続可能なエネルギー源のことを指します。工場では、太陽光発電や風力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーを導入することで、化石燃料に頼らずに電力を得ることが可能です。これにより、工場のCO2排出量を大幅に削減し、地球温暖化対策に貢献することができます。
廃水処理装置の設置
適切な廃水処理装置を導入して、有害物質を除去し、地域の水域に安全に放出するようにします。廃水処理装置は、微生物を活用して有害物質を分解する方法や、フィルターや化学反応を利用して有害物質を分離する方法などがあります。工場の規模や生産プロセスに合わせて適切なものを選定します。浄化された水を再利用することも環境に配慮した取り組みとして有効です。
リサイクルと廃棄物削減
工場内で発生する廃棄物を最小限に抑えるためには、リサイクルや廃棄物削減の取り組みが重要です。再利用可能な資源や材料を使用したり、廃棄物の分別をきちんと行って、新たな製品や原料として活用することで、廃棄物の削減に役立てることができます。
遮音壁や防振対策の導入
工場内の壁や騒音の元となる機会に吸音材や遮音材、防振剤を使用することで騒音の拡散を防ぎ、最小限に抑えることが可能です。また、定期的なメンテナンスや騒音測定を行うことも大切です。
まとめ
工場内の環境対策は、地球環境への影響を最小限に抑えるために欠かせない重要な取り組みです。汚染物質などはなかなか目視では確認できない部分でもありますが、それゆえより慎重なアプローチが必要です。工場内の環境対策は地球環境を守るだけでなく、企業のイメージ向上や競争力の強化にも繋がります。工場内の環境や設備をきちんと整え、適切な対策を講じて環境への負荷を最小限に抑えましょう。
- 執筆者
-
-
一級建築士 / 一級建築施工管理技士
- 宮前 聡志
営業企画課課長。工場管理経験と設計業務を経験し、2018年にSAWAMURAに建設プロデューサーとして入社。現場・設計・営業を知るオールラウンダー。
-
- コピーしました
- この記事を印刷する
- メールで記事をシェア