工場やオフィスを開くと企業は豊かになる。友安製作所に学ぶ働く場の新しいかたち

製造業におけるオフィスや工場は、しばしば「作業をするための場所」「外から見えにくい場所」として閉じた存在になりがちです。しかし、その空間を“企業の資産”として捉え直すことで、社員の働き方だけでなく、企業そのものの魅力を高める場へと変えることができます。

 

大阪府八尾市に本社を置く友安製作所は、こうした取り組みを先進的に実践している企業です。生活にまつわるものづくりからサービスまで幅広く手がける同社は、オフィスや工場を地域に開き、ものづくりを肌で感じられる“魅せる空間”として体現しています。

今回リニューアルされた本社を訪れ、統括プロデューサーの松尾泰貴さんに改修がもたらした変化や、製造業における働く場所づくりのこれからについて伺いました。

 

松尾 泰貴氏

松尾 泰貴 株式会社友安製作所 ソーシャルデザイン部執行役員 八尾市役所で産業政策に携わった後、経済産業省で関西圏のベンチャー政策に従事。「みせるばやお」を立ち上げ『地方公務員アワード2019』受賞。2021年、友安製作所へ入社し、ソーシャルデザイン部を新設。現在は国のオープンファクトリー研究会委員などを務め、「FactorISM(ファクトリズム)」統括プロデューサーとして地域と企業をつなぐ取り組みを牽引している。

友安製作所の紹介

友安製作所は、ネジやカーテンフックをつくる町工場としてスタートしました。現在は理念「Add Colors to Everyone’s Life(世界中の人々の人生に彩りを)」を軸に、通販やDIY、カフェ、工務店、メディア、レンタルスペース、まちづくりと事業を拡大中。ものづくりにとどまらず、暮らしそのものを提案する企業へと進化しています。

スローガンは「生きるをあそぶ」。社員の個性や自由な発想が尊重され、新しい事業や商品が次々と生まれています。

サイトURL:https://tomoyasu.co.jp/

理念を形にする「空間」が、コミュニケーションを変える

改修前の本社は、人員増加に伴い、手狭な場所にギュウギュウと詰め込んだ状態で、フリーアドレスを導入するなどの「余白」がない現状でした。昼食も社外で個別に済ませる人が多く、「同じ会社にいながら、どこか距離がある」雰囲気が漂っていたといいます。

 

こうした見えない壁を取り払うために行われたのが今回の大幅改修です。1・2階には工場機能を再配置し、3階をオフィスフロアとして全面的に再設計。壁やパーテーションを極力なくした、開放的なワンフロアへと生まれ変わりました。

 

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開放的になった3階オフィス

 

松尾さん「僕たちの理念“Add Colors to Everyone’s Life”は、お客様だけでなく社員の日常にも向けたものです。制度やルールを整えるだけでは十分ではなく、環境や文化まで含めて一貫性を持たせないと根づきません。ライフスタイルを提案する企業として、社員自身がいきいき働ける空間づくりが不可欠だと考えました」

 

友安製作所はこれまでもビジネスネーム制度、日報の活用、全社員参加でのコアバリュー策定など、社員が主体となる文化づくりを積み重ねてきました。今回のオフィス改修は、そうした取り組みを“働く環境”の面から後押しするものです。

改修後は部署間の距離が縮まり、オフィス内で社員同士昼食を共にする姿も。日常の小さな交流が増えたことで、社内の雰囲気やコミュニケーションの質も変化し、同じ空間で働く一体感が強く感じられるようになったといいます。

 

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社員がオリジナルで制作したオブジェや家具が並ぶ

働く場を開くことで生まれる好循環

友安製作所ではオフィスや工場を積極的に公開しています。現在では毎日3〜4組の見学者が訪れ、オフィスそのものがショールームとして機能し、工場では製品誕生のプロセスを目の前で見ることができます。

同社の“魅せる”姿勢は細部にまで徹底されています。

 

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トイレまで魅せる空間として公開している

 

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工場では製造過程を見学でき、社員が実演を交えながら製品の魅力を伝えている

 

松尾さん 「オフィスを作るときに、弊社のコアバリューである『Do With PASSION 仕事に、遊びに、情熱を!いちいちかっこいい仕事を』を体現するべく、トイレにまでこだわったんです(笑)。トイレットペーパーホルダーやドアノブなどの細部まで自社の製品や技術を使っています。ほかにもお客様用のスリッパにレーザーで名入れをしたり、食器のひとつひとつにロゴを入れたりと、誰も見ていないような部分にこそ徹底して手をかける。そうした姿勢を可視化することで、言葉以上に技術力やブランドへの信頼を感じてもらえると考えています。

 

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さらに、実際にものづくりの現場を見てもらうことで企業としての透明性が高まり、より身近に感じてもらえるはずです。『こんな世界があるんだ』と知ってもらうだけでも、誰かの心が動くきっかけになる。だからこそ、細部へのこだわりも含めて、働く現場を開くことが重要なんです。」

 

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本社の壁面には友安製作所の製品や思いを積極的に“魅せる”展示が並ぶ

 

社員にとっては、日々の仕事を直接見てもらうことで、自分たちの技術やものづくりの価値を再認識でき、自然と誇りやモチベーションに繋がります。一方で、見学者は製品の裏側にある技術や、人の手が生み出す温かみに触れることができます。こうした体験は、企業理解を深めるだけでなく、製造業で働くことへのイメージをポジティブに更新するきっかけにもなっています。

地域とともに製造業の未来を盛り上げる

友安製作所は定期的に「トモフェス」というイベントを開催し、地域に開く取り組みを継続しています。さらに松尾さんは、オープンファクトリープロジェクト「FactorISM」の立ち上げにも携わり、ものづくりの現場を地域に開くイベントを推進。今年度は92社が参加し、八尾市から周辺地域へとその輪が広がっています。

 

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松尾さん「僕たちが目指すのは、行政と民間企業、そして市民の間にある境界線をなくすことです。ノウハウを共有しながら、地域全体で産業を盛り上げることが目標です。」

 

こうしたイベントを通じ、地域全体で製造業の魅力や価値を共有する機会も増えています。さらに、イベントをきっかけに友安製作所へ入社し、活躍している社員もいるそうです。

今後の展望:地域と世界をつなぐ“ハブ”へ

友安製作所は今後も、企業を外に開く取り組みを継続していきます。

突然の見学にも全社員が対応できるよう一人ひとりが自社の魅力を語れる文化を育み、「いつでも誰でも受け入れられる企業」を目指しています。

 

さらに、将来的にはヨーロッパ進出も視野に入れているとのこと。八尾から世界へとつながる“ローカル・トゥ・ローカル”のハブとなることを見据え、地域に根差しながら世界とつながる新しいものづくりのあり方を追求し続けます。

おわりに:工場を誇れる場所に

工場やオフィスは、単なる作業場ではありません。働く人を支え、企業の姿勢を映し出し、文化を育てる場所でもあります。

効率や生産性の追求に加えて、地域への開放や社員の交流、理念が息づく空間づくりは働く場所に“付加価値”をもたらし企業の魅力を強くしていきます。

 

私たち澤村も工場建設に携わる際には、機能性だけでなく「その空間がどのような価値を生み出せるか」という視点を大切にしながら、お客様の想いに寄り添う提案を行っています。自社の働く環境を改めて見つめ直してみると、新しいアイデアや小さな工夫で、社員がよりいきいきと輝ける場所へと変わるはずです。

これからの時代の「工場づくり」について、ぜひ私たちと一緒に考えてみませんか。

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