SAWAMURAが語る工場建設プロジェクトの裏側|日野精機株式会社様【前編】
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- 工場建設ソリューション編集部
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SAWAMURAは2019年から2020年にかけて、日野精機株式会社(以下、日野精機)様の野洲新工場の建築プロジェクトを手掛けました。本プロジェクトでは短納期やリソース不足など、多くの課題に直面しながらも、お客さまのご要望に応え、さらには工場に付加価値を付けて従業員が働きやすい工場を実現することができました。
そこで野洲工場の新築工事プロジェクトを牽引した担当者へのインタビューを通して当時を振り返り、どのようにプロジェクトに向き合い完遂したのか、その裏側を前編・後編に分けて探っていきます。
前編では、プロジェクト開始から工場の設計過程までを振り返ります。
話し手
河村(写真左) 建設プロデューサー。プロジェクトの全体進行、ヒアリング、提案を担当
徳永(写真中央) 建設プランナー。プロジェクト提案、工場の設計を担当
藤森(写真右) 施工管理。一連の施工プロセスを担当
聞き手
岩崎 ソリューショングループマーケティングディレクター
工場は生産性だけじゃない。働く全ての人に満足感をもたらす提案を
——今回のプロジェクトの背景について教えていただけますか?
河村:日野精機様は、スピーカーなどの音響機器、医療機器、農機の部品を製造する金属加工・板金・塗装会社です。既存の日野工場では、敷地内に工場を増やす余地がなく、工場機能も受注に対して不足している状況でした。また、各製造工程で建物が異なっていたこともあり、作業をワンストップで行える新しい工場の建設が求められていました。
新工場での受注もすでに決まっていたので、工期から逆算して稼働時期に間に合うように進める必要がありました。
短納期、かつリソースも十分ではないなかで始まったプロジェクトでしたね...。
——新工場建設にあたって、お客さまにどのような工場をご提案したのでしょうか?
河村:当初は「広い工場をコストパフォーマンスよく建てたい」というご要望がありました。機能面のご要望においてはSAWAMURA独自のシステム建築「カナリス」工法で、お客さまの要件を満たす技術を提供できる自信がありました。
その上で「次の世代に良いものを残したい」という社長からのお言葉もあり、"良いもの"とは具体的にどんな工場なのだろう?と担当者の方と一緒に考えを巡らせました。最終的には機能的な要件を満たすものだけではなく、さらに付加価値をのせたご提案をさせていただきました。
——なるほど。工場は単なる生産設備としての役割だけではないということですね。
河村:そうですね。ヒアリングを丁寧に行うなかで、従業員の皆さんが気持ちよく働ける工場にしたいという思いがみえてきました。さらに今後の展望などを詳しくお聞きして、すぐに「こんなのどうですか?」と徳永くんが提案してくれました。
徳永:工場で懸念されがちな3K(きつい、汚い、危険)のイメージを払拭し、新たな3K(きれい、かっこよく、こだわりをもつ)を定着させたいというキーワードが挙がったので、それに合わせて、オープンファクトリーをご提案しました。安全に働ける設備はもちろん、シャワールームや休憩室など、作業スペース以外の空間にもこだわりました。
——オープンファクトリーを実現するためにお客さまとのやり取りのなかで工夫したことはありますか?
河村:実際にSAWAMURAが手がけたオープンファクトリーの例となる工場をいくつかピックアップし、お客さまと一緒に工場見学を行いました。カナリスの躯体、オフィス、工場それぞれを実際に見たことで、「きれい、かっこいい、こだわりをもつ」という3Kに対する共通認識が深まり、より具体的なご提案ができるようになりました。
徳永:そうですね。当初は担当者の方自身もどのような設備や内観が望ましいのか悩まれることもあったのですが、見学を通じて「こんなオフィスが良いよね」「こんな食堂があったら良いよね」という、より具体的なご要望をいただけるようになりました。
日野精機様は、取引先のお客さまや新規獲得時に工場内を見てもらうことがあるとお聞きしていたので、お客さまの動線で日野精機らしさをアピールできるよう、コーポレートカラーのデザインや、日野精機の技術を用いたオブジェをご提案したりもしました。
——そういう工夫って工場だと見逃してしまいがちな部分かもしれないですね...
徳永:結果として日野精機様の高い技術力や特長を工場の設計に反映させつつ、働くさまざまな方に納得いただける形のご提案ができたことがとても嬉しかったです。
日々変化する要件に柔軟に対応する設計プロセス
——では、実際にプロジェクトが始まり、工場を設計していくなかで大変なことはありましたか?
徳永:新工場では、導入する機械にオーダーメイドが多く、メーカーに発注してから詳細な図面があがってくることがほとんどで、事前に設計の要件を把握することができませんでした。そのため電源やガス、換気口や空調の設計などに多くの不確定要素があり、現場での変更も多く発生しました。
さらに、将来的に設置予定だった塗装エリアを、急遽今回の竣工に合わせて整備することになりました。塗装エリアは高温を発するため、その要件を考慮した設計や施工図の再整理が必要になりました。
——そういった状況で、スケジュール通りに進めるのは難しかったのではないでしょうか?
徳永:なかなか先が見通せない状況が続いたので苦労しました。
このあと実際に施工過程を担当した藤森さんの苦労話もでてくると思いますが(苦笑)。
藤森:今思い返してみても本当に大変だったなと思います(笑)。でも、日野精機様の担当者の方々が私たちを信じて協力してくださったので、とてもありがたかったです。SAWAMURAのプロジェクトメンバーだけでなく、お客さまとも信頼関係を築きながら進められたことは、この状況を乗り越えられた要因の一つだと思います。
後編ではプロジェクトで直面した数々の課題をどのように乗り越え、成功に導いたのかについてお聞きします。さらには具体的な成果や今後の展望についてもご紹介します。
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- 工場建設ソリューション編集部
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