被害拡大を防ぐために工場で行うべき防火対策とは?

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- 工場建設ソリューション編集部
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製造業において「安全」は何よりも優先すべきテーマです。特に火災は、一度発生すると人的被害や操業停止だけでなく、製品・設備の損失、さらには周辺地域への影響にもつながりかねません。
では、どのような備えを行えば、被害を最小限に抑えることができるのでしょうか?
本記事では、工場における防火対策の基本と、火災による被害拡大を防ぐための設備・設計のポイントについて解説します。
火災リスクが高く、被害が拡大しやすい工場火災
工場では電気系統のトラブルや静電気の発生、可燃物の取り扱いミスなど、火災につながるリスクが数多く潜んでいます。
過去には火薬製造工場で化学物質の管理が適切に行われていなかったことから爆発が発生し、建物が吹き飛ぶほどの被害となり、作業員が行方不明になるという事故がありました。
また、製菓工場で乾燥機付近から出火し、立ち上がった火炎が天井の断熱材に引火。火の回りが早まり火災が拡大した結果、従業員5名が亡くなるという痛ましい事故も起きています。
(参照:労働安全衛生総合研究所コラム)
工場で一度火災が発生すると、製造の停止や製品の損失にとどまらず煙や臭気による周辺地域への影響、さらには近隣企業への延焼といった二次的被害へと発展するおそれがあります。
工場によっては可燃性の高い物質や有害化学物質を扱っている場合もあり、延焼や有害物質の拡散といったリスクも大きくなります。
消防庁防災情報室の資料(出典はこちら)によると、令和5年の工場・作業場での火災件数は1767件と前年から6.8%増加しています。
近年では工場の老朽化や製造工程の多様化・複雑化などにより火災リスクが高まっており、万全な防火対策が求められています。火災を発生させないことも重要ですが、万が一発生した際に被害を拡大させないための「拡大防止」も重要な備えのひとつです。
以下に工場でどのような対策を行う必要があるのかをご紹介します。
火災リスクを抑えるために必要な設備
火災による被害を最小限に抑えるために、以下の3つの観点から防火設備を整える必要があります。消防法に基づき建物の規模・用途によって設置が義務づけられている設備もあります。
消火設備
初期段階で火を食い止めるための設備として、以下のものが一般的です。
- スプリンクラー設備
- 屋内消火栓設備
- 粉末消火器
警報設備
火災の発見と対応を早めるための通知装置です。
- 自動火災報知設備
- 火災通報装置(一般的には固定電話で代替されることもあります)
避難設備
従業員の安全な避難をサポートします。
- 誘導灯・誘導標識
- 避難器具(避難はしご・滑り台など)
これらの設備は、いざという時に確実に作動することが重要です。そのためには、日常的な管理や点検も不可欠です。特に粉末消火器は、製造から10年が使用期限とされており、有効期限内であっても設置環境によっては腐食や損傷が進んでいる場合もあるため、定期的な点検・更新も重要です。
設備だけでは不十分。火災を防ぐ工場のポイント
防火設備だけでなく、建物の設計段階から火災を想定することも非常に重要です。火災による被害を最小限に抑えるための工夫の一例をご紹介します。
燃えにくい内装材の選定
室内の仕上げは必要に応じて不燃材料、準不燃材料、難燃材料を選定します。
特殊建築物、大規模建築物、火気使用室、内装制限における無窓居室などは建築基準法にて仕上げ材料の指定があります。
法規制にて指定されるのを遵守するのはもちろんですが、可能な限り燃えにくい素材を選定します。特に、火気を使用する部屋や避難経路になる箇所は特に重要です。
火災発生時の避難導線の確保
火災が起きたときに最優先されるべきは人命の安全です。そのためには工場内のどこにいてもスムーズに避難できる導線を設計する必要があります。具体的には次の点を確認します。
- 作業機械や棚が避難通路をふさいでいないか
- 従業員が移動しやすい場所に避難口を設置しているか
- 避難口の位置や通路幅が基準を満たしているか
可燃物と作業エリアの配置の工夫
工場では原料・製品・資材などに可燃性のものが多く含まれている可能性があります。作業効率だけでなく、火災リスクを分散できるレイアウトを意識することが大切です。具体的な注意点は以下の通りです。
- 原料・製品の保管場所は火気を扱う場所から離す(※可燃物等においては集積容量、集積単位ごとの離隔距離等の規制があります)
- 防火区画を設け、可燃物はその中に限定して配置する
- 溶接・加熱作業などのエリアとは耐火壁や防火扉でしっかり分離する
防火シャッターを活用した設計
火災時に延焼を防ぐための「仕切り」も重要です。たとえば、防火シャッターや防煙垂れ壁は、火の拡大や煙の充満を抑え、避難時間を確保する効果があります。
- 防火区画用シャッター:火災感知で自動的に閉まり、火の広がりを防ぐ
- 防煙垂れ壁:煙が天井を伝って広がるのを抑制し、視界や避難の妨げを防止
消防法に基づく防火対策は専門家との連携が不可欠
工場の防火対策は、消防法に基づき実施しなければなりません。必要な設備や対応内容は「延床面積」「扱う物質の種類」「用途」によって異なります。また、消防署への届出など法的手続きも必要となります。
消防法に基づく対応が正確に行われないと、安全性が確保されないのはもちろん、工事のやり直しや工程の遅れにつながる可能性があります。
そのため、設計段階から防火対策や消防法対応を理解している専門家と連携することが不可欠です。
まとめ
工場で火災が発生すると、操業停止にとどまらず、人的被害や周辺地域への影響といった大きな被害につながる可能性があります。こうしたリスクを防ぐためにも、消防法に基づいて自社の設備や業種に適した防火対策が重要です。
SAWAMURAでは、専門知識を有するスタッフが工場建設における防火対策や消防法対応も含めたトータルサポートを提供します。新たに工場を建てたいとお考えの方はもちろん、現在の工場の防火体制を見直したい方もぜひお気軽にご相談ください。
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- 工場建設ソリューション編集部
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