【セミナーレポート】2028年度 建築LCA報告義務化へ向けた、企業が今取り組むべき脱炭素対策

2028年度の建築LCA(ライフサイクルアセスメント)報告義務化に向けた動きが進む中、サプライチェーンにおける脱炭素対応は、大企業だけでなく中小企業にとっても重要な経営課題となりつつあります。近年では、大手企業がScope3(サプライチェーン全体で発生するCO2排出量)の把握・削減を進める中で、取引先である中小企業にも環境データの提示や脱炭素への取り組みを求めるケースが増えています。一方で、「脱炭素に取り組む必要性は理解しているものの、何から始めればよいかわからない」という企業も少なくありません。

 

そこでSAWAMURAは「中小企業のための環境経営セミナー」を開催しました。

本記事では、講師として登壇された株式会社Zevero 数土 伸也 氏(元・大手物流企業グループESG推進部長)の講演内容をもとに、建築分野におけるCO2規制の潮流、改正建築物省エネ法のポイント、政府支援策、企業が今から取り組むべき具体的な対応について解説します。

なぜ今、「建築物のCO2」が問われるのか

世界と日本で進む建築脱炭素化の流れ

気候変動対策が世界的に進む中、建築分野は脱炭素化における重要な領域となっています。世界のCO2排出量の約37%は建築物セクターに関連しているとされており、これは建物の運用時に発生する排出だけではありません。

 

対象となるのは、

  • 資材の製造

  • 資材輸送

  • 建設工事

  • 建物の運用

  • 改修

  • 解体・廃棄

など、建物のライフサイクル全体で発生するCO2です。これまで建築分野では、建物完成後の省エネルギー性能が主な評価対象でした。しかし今後は、「建てる時」「壊す時」に発生するCO2、つまりエンボディドカーボン(Embodied Carbon)への対応が不可欠になります。

欧米および日本で進む建築LCA対応

世界各国では、建築物のライフサイクルCO2(LCCO2)を評価する動きが加速しています。

 

EU(欧州):EPBD(建築物エネルギー性能指令)の改正により、2028年から新築建築物等に対するLCA(CO2算定)の義務化が進められています。また、オランダ・フランス・デンマークなどでは、建築LCAの算定・届出制度が導入されており、ドイツなどでも制度化に向けた動きが進んでいます。

 

米国:バイ・クリーン法(Buy Clean Act)やカリフォルニア州法などにより、公共工事を中心にEPD(環境製品宣言)を取得していない建材が調達時に不利になる動きが広がっています。

 

日本:日本でも、2050年カーボンニュートラル実現に向け、建築分野におけるLCCO2算定・評価制度の整備が進められています。

京滋地区(滋賀県等)の企業が受ける影響

特に滋賀県をはじめとする京滋地区では、製造業の集積が大きな特徴です。滋賀県は県内総生産に占める製造業比率が全国1位であり、琵琶湖周辺の交通・物流インフラを背景に、多くの工場や物流拠点が存在しています。

 

こうした地域では、大手企業のサプライチェーン(Scope3)を支える中堅・中小企業も多く存在します。

 

今後は、

  • 建物新築時のCO2排出量

  • 使用する建材のCO2データ

  • CFP(カーボンフットプリント)やEPD情報

などの提示を求められる機会が増える可能性があります。建築物のCO2可視化は環境対応だけではなく、取引継続や新たなビジネス機会にも関わる経営課題になりつつあるのです。

改正建築物省エネ法で何が求められるのか

2026年3月に閣議決定・国会提出され、同年7月に成立した「改正建築物省エネ法」(正式名称:建築物のエネルギー消費性能の向上及び脱炭素化の促進に関する法律)により、2028年度からの建築LCA(LCCO2)制度化に向けた取り組みが進められています。なお、具体的な施行日は今後、政令で定められます。

4つの主体それぞれに求められる役割と対応

2028年度以降の建築LCA制度化に向けては、建築主・設計者・建設業者・建材メーカーなど、建築に関わる各主体がそれぞれ役割を担うことになります。

建築主(発注者・オーナー):届出義務

延べ面積5,000㎡以上の特定用途建築物を発注する場合、LCCO2評価結果の行政への届出が求められます。

建築士(設計者)努力義務(説明)

延べ面積2,000㎡以上の非住宅建築物の設計時に、建築主へLCCO2削減措置について説明を行う努力義務があります。

建設業者:努力義務(説明)

工事請負契約締結時に、建築主へ施工段階などにおけるCO2削減措置について説明する努力義務があります。

建材メーカー:努力義務(表示)

自社製品のCO2排出原単位(EPD・CFP)を把握し、表示・提示する努力義務があります。

「大手企業だけの話」ではない。中小企業にも関係する建築LCA対応

延べ面積5,000㎡以上の届出義務は、まず大規模な事務所などを対象として想定されています(具体的な用途・規模は今後、政令で定められます)。一方、国のロードマップでは制度開始後おおむね5年以内に対象用途・規模を拡充する方針が示されており、自社で保有する大型工場・物流倉庫・データセンター・店舗などを新築・建て替えする一般的な事業会社も、将来的に対象となる可能性があります。

 

また、延べ面積2,000㎡以上の非住宅建築物では、年間約3,300棟が説明義務の対象になるとされており、中堅・中小企業が関わる工場・オフィス・店舗なども対象となる可能性があります。

「まだ自社には関係ない」と考えるのではなく、今のうちから制度動向を把握し、対応準備を進めることが重要です。

政府の支援策を活用し、建築GX・DX推進事業で進める脱炭素対応

建築LCAへの対応には、CO2排出量の算定や必要データの整理など、一定の専門知識や作業負担が必要になります。

一方で、国土交通省では、企業の脱炭素化や制度対応を後押しするため、「建築GX・DX推進事業」などの支援策を用意しています。

補助制度を活用することで、建築LCA算定に必要な費用や専門家による支援を受けながら、早期に準備を進めることが可能です。

建築GX・DX推進事業における主な補助内容

・LCCO2評価実施型(BIMなし):最大650万円/件

LCCO2評価の実施費用を補助。外部コンサルタントへの委託費も補助対象となり、算定ツールとしてJ-CATの活用が推奨されています。

・LCCO2評価実施型(BIMあり):最大500万円/件

BIMモデルを活用したLCCO2評価を対象とした補助制度です。こちらもJ-CATの活用が推奨されており、コンサルタントへの委託費が対象となります。

・CO2原単位等策定支援:最大+400万円

上記のLCCO2評価に加え、CO2原単位の策定が必要な場合に追加支援を受けることができます。

・BIM活用型:延べ面積に応じて補助額を設定

BIM活用による掛かり増し費用の1/2を補助します。

補助制度活用のポイント

応募期間は令和8年4月から12月末までですが、交付申請の締切は9月末です。その後、算定・実績報告を進め、完了実績報告は令和9年2月頃までに行うスケジュールが想定されています。

制度を理解してから準備を始めると、対応期間が限られる可能性があるため、補助制度を有効活用するためにも、早めの情報収集と準備が重要です。

実践事例:SAWAMURAとの建築LCA取り組み

SAWAMURAでは、発注者である製造業者の新築倉庫工事を対象に、国土交通省推奨ツール「J-CAT」を用いた建築LCA算定を実施しました。

対象案件

  • 建物用途:倉庫

  • 延床面積:約6,000㎡

  • 構造:S造1階建て

 

この取り組みでは、単にCO2排出量を算定するだけではなく、実務で発生するさまざまな課題にも向き合いました。

建築LCA算定で直面した「3つの壁」と解決策

①情報収集の壁:必要なデータをどう集めるか〜

建築LCA算定では、使用した資材量や重量など、詳細なデータが必要になります。しかし実際の工事見積書や内訳書では、「一式」と記載されている項目も多く、コンクリート数量や鉄骨重量などを正確に把握することが難しいケースがあります。

解決策

設計図書や構造計算書を確認しながら、現場担当者と密にコミュニケーションを取り、必要なデータを補完しました。

②ツール・マニュアルの壁:専門ツールを扱う難しさ

今回活用したJ-CATは、建築LCA算定のための有効なツールである一方、

  • マニュアル:約170ページ超

  • シート数:約75枚

と、通常業務と並行して担当者だけで対応するには負担が大きい部分がありました。

解決策

専門知識を持つZeveroが入力方法や算定プロセスをサポートし、効率的な算定を支援しました。

③結果検証の壁:算出結果をどう判断するか

算定したCO2排出量が適切な数値なのか、単純に結果を見るだけでは判断できません。

解決策

同規模・同用途の建築事例や公的データと比較し、算定結果の妥当性を確認しました。

建築LCA対応を始めるための3ステップ

STEP1:まず知る

情報把握

法改正のスケジュールを確認し、自社が保有するビル・工場・倉庫や今後の建築計画が対象になる可能性を確認します。

STEP2:試す

補助金を活用した算定

「建築GX・DX推進事業」などの補助制度を活用し、まずは1物件でLCCO2算定を実施してみることが有効です。

実際に算定を経験することで、自社に必要なデータや体制が明確になります。

STEP3:資材を整える

継続的な対応体制づくり

今後は建材のCO2情報が重要になります。
建材メーカーはEPD・CFP取得を進め、建築主やゼネコンはCO2情報を確認した資材選定方針を整備することが求められます。

Zeveroが提供するワンストップ支援

建築LCA対応には、専門知識だけでなく、データ整理・算定・制度活用まで幅広い対応が必要になります。

 

Zeveroでは、

  • 建物全体のLCCO2算定

  • J-CAT入力代行・評価支援

  • 建材EPD取得支援

  • ドイツEmidat等との連携による建材データ整備

  • 補助金申請・報告手続き支援(行政書士との連携)

まで、企業の脱炭素対応をワンストップでサポートしています。

まとめ:2028年度の建築LCA制度化に向け、今から準備を

2028年度に向けて、建築物のライフサイクル全体におけるCO2排出量(LCCO2)を把握する取り組みが本格化しています。今回紹介したように、建築LCAの算定には、必要なデータの収集や専門的な知識など、実務上のさまざまな課題があります。

 

一方で、補助制度を活用しながら、まずは自社に関係する建築物で算定を経験することで、今後求められる対応への準備を進めることができます。

2028年度の制度化を見据え、まずは自社の建築物が対象となる可能性があるかを確認し、必要なデータ整理や算定方法について情報収集を始めることが重要です。

 

SAWAMURAと株式会社Zeveroは、建築現場の知見とCO2算定の専門性を組み合わせ、企業の建築LCA対応を支援しています。

セミナー動画をご覧いただけます

当日のセミナーは動画でもご視聴いただけます。以下のフォームよりダウンロードしてご覧ください。

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